亜鉛は、薄毛や脱毛症の一種であるAGA(男性型脱毛症)に対して一定の効果が期待されるミネラルのひとつです。AGAは、男性ホルモン(アンドロゲン)と遺伝的要因が主な原因とされ、特に頭頂部や前頭部の髪が細く短くなり、最終的に脱毛が進行していくのが特徴です。このAGAの進行に関わるホルモンの一つであるDHT(ジヒドロテストステロン)は、テストステロンが5αリダクターゼという酵素により変換されて生成されます。DHTは毛根に悪影響を及ぼし、毛周期の成長期を短縮させるため、髪が十分に成長しないまま抜けやすくなります。このDHTの生成に対し、亜鉛は抑制効果を持つとされています。
亜鉛の作用とAGAとの関係
- DHTの生成抑制
亜鉛には、DHTを生成する酵素である5αリダクターゼの活性を抑える働きがあるとされています。これにより、DHTの過剰な生成が抑えられ、AGAの進行が遅くなる可能性があります。特にAGA患者においては、DHTの増加が主な脱毛の原因であるため、亜鉛の摂取がAGAに有効であると考えられます。 - 髪の成長を助ける役割
亜鉛は髪の成長や修復においても重要な役割を果たしています。亜鉛はたんぱく質合成に関与しており、毛母細胞が新しい毛髪を生成するために必要な材料を提供します。髪の主成分であるケラチンの生成を助け、髪を強く健康に保つため、亜鉛不足により髪がもろくなったり抜け毛が増えたりするリスクが高まります。 - 皮脂の分泌をコントロール
亜鉛は皮脂の分泌を調整する働きも持っています。過剰な皮脂分泌は毛穴を詰まらせ、髪の成長を阻害する要因となりますが、亜鉛が皮脂の量を適正に保つことで、毛根が健康な状態を保ちやすくなります。
亜鉛不足とAGAのリスク
亜鉛は体内で作り出すことができない必須ミネラルであるため、食事などから十分に摂取する必要があります。亜鉛が不足すると、AGAの進行リスクが高まる可能性が指摘されています。具体的には、亜鉛不足によって髪の成長が鈍化し、抜け毛が増えることがあります。亜鉛が不足しやすい主な原因には、食生活の偏りや過度な飲酒、ストレスなどが挙げられます。
亜鉛の適切な摂取量と摂取方法
成人男性の1日の亜鉛推奨摂取量は約10mgとされていますが、AGAの症状が気になる場合は適切な量を守りながら、食品やサプリメントから補うことが推奨されます。ただし、亜鉛は過剰摂取すると消化不良や鉄分の吸収阻害を引き起こすリスクがあるため、上限量(40mg)を超えないよう注意が必要です。
亜鉛を多く含む食品としては、牡蠣、レバー、牛肉、大豆、かぼちゃの種、ナッツ類などが挙げられます。これらの食品をバランスよく取り入れることで、亜鉛を効率的に摂取できます。また、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂取することで、亜鉛の吸収が高まるとされています。
亜鉛だけでなく総合的なケアが必要
亜鉛はAGAの進行を抑える助けになる可能性があるものの、単独での効果は限られています。AGAはホルモンや生活習慣、遺伝的要因など複合的な要素で進行するため、生活習慣の改善や適切なヘアケア、医療機関での治療(フィナステリドやデュタステリドなどの薬剤治療)も併せて検討することが重要です。
亜鉛の摂取は、健康な髪を育むための一つのサポートにすぎないため、総合的なケアを意識することが大切です。