デュタステリドとフィナステリドは、AGA(男性型脱毛症)の治療に用いられる薬ですが、いくつかの重要な違いがあります。どちらも5αリダクターゼと呼ばれる酵素の働きを抑えることで、AGAの原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を阻止し、脱毛の進行を遅らせる効果があります。以下、それぞれの特徴と違いについて解説します。
1. 作用機序の違い
フィナステリドとデュタステリドは、いずれも5αリダクターゼ阻害薬ですが、異なるタイプの5αリダクターゼに作用します。
- フィナステリド
フィナステリドは、5αリダクターゼのうち「タイプII」のみを選択的に阻害します。タイプIIは頭皮や前立腺に多く存在しており、AGAに関係の深いDHTの生成に直接関与しています。フィナステリドのDHT抑制効果は頭皮において約60~70%とされています。 - デュタステリド
デュタステリドは、5αリダクターゼの「タイプI」と「タイプII」の両方を阻害します。タイプIは皮脂腺や汗腺に多く存在し、頭皮にも分布しているため、デュタステリドはより幅広くDHTの生成を抑える効果があります。デュタステリドのDHT抑制効果は約90%以上で、フィナステリドよりも強力です。
2. 効果の強さ
デュタステリドのほうが、DHT抑制において高い効果を示すため、特に進行したAGA患者やフィナステリドで効果が不十分だった患者に適しています。一部の臨床試験では、デュタステリドのほうがフィナステリドよりも発毛効果が高いことが示されています。髪の太さや本数においてデュタステリドの方が良好な結果を示すことがあり、特に頭頂部の薄毛改善に効果が期待されています。
3. 服用方法と半減期の違い
デュタステリドとフィナステリドは、どちらも1日1回の服用が基本ですが、半減期(薬が体内で減少する速度)に大きな違いがあります。
- フィナステリド
フィナステリドの半減期は約6~8時間と比較的短く、服用を中止すると数日以内に体内から排出されます。そのため、効果を持続させるには、毎日の服用が欠かせません。 - デュタステリド
デュタステリドの半減期は約3〜5週間と非常に長く、体内に蓄積されやすい特性を持っています。このため、服用を中止しても効果が比較的長期間続く可能性がありますが、逆に副作用が出た場合も症状が長引く可能性があります。
4. 副作用のリスク
デュタステリドとフィナステリドはいずれもホルモンに関連する薬であり、共通して以下の副作用が報告されています。
- 性欲減退や勃起不全
どちらの薬もDHTの生成を抑制するため、性機能に影響が出ることがありますが、一般的にデュタステリドの方が効果が強力であるため、性欲減退などの副作用が出やすいとされています。 - 抑うつ症状
DHT抑制による影響で精神面に不調が生じることもあります。どちらの薬も稀に抑うつ症状が現れることがあるため、気になる場合は医師に相談することが重要です。 - その他の副作用
乳房の痛みや肥大、肝機能への影響が報告されることがありますが、頻度は低いです。
5. 医薬品としての適応と処方
フィナステリドは、比較的軽度のAGAに対して広く処方されており、価格もデュタステリドより安価な傾向にあります。デュタステリドはフィナステリドで効果が得られない場合や、より強力な治療が必要な場合に処方されることが多く、効果が強力な分だけコストも高い傾向があります。
6. どちらを選ぶべきか
AGAの進行具合や体質によって、デュタステリドかフィナステリドのいずれかが推奨されます。一般的には、軽度~中等度のAGAにはフィナステリドから開始し、効果が不十分な場合や進行したAGAにはデュタステリドを試すケースが多いです。ただし、自己判断での選択は難しいため、医師の診断のもとで適切な治療薬を選ぶことが大切です。
まとめ
デュタステリドとフィナステリドはどちらもAGAの進行を遅らせ、発毛を促進する効果が期待できる薬ですが、作用範囲や効果の強さ、服用時の持続時間、副作用のリスクに違いがあります。治療を始める際は、医師の指導のもとで自分に合った薬を選び、長期的な視点で治療を継続することが大切です。